小説の構成を作るには、起承転結か三幕構成の枠組みを使うのが基本です。
どちらも「物語の骨格を設計するための枠」で、これがあると執筆中に方向を見失いにくくなります。
ただ、どちらを選ぶかは作品の規模によって変わります。
この記事では、起承転結・三幕構成それぞれの仕組みを整理したうえで、自分の作品に合った構成の選び方と、実際に使えるテンプレートをまとめました。
構成がなければ小説は迷子になる
物語を書き始める前に「構成の枠組み」を決めておくと、執筆中に方向を見失いにくくなります。
プロットと構成は別物です。
プロットは「何が起きるか」を並べたもの。
構成は「どういう順番で、どこに山場を置くか」を設計するものです。
構成の枠組みを先に決めると迷いにくい
構成が先にある状態でプロットを作ると、各シーンの「役割」が見えやすくなります。
このシーンは読者に世界観を伝えるためのものか、葛藤を積み上げるためのものか、それとも転換点なのか。
役割が決まっていると、不要なシーンを削る判断もしやすくなります。
思いついた順に書くと詰まる理由
思いつきで書き始めること自体は悪くありません。
問題は、読者が「なぜこの場面を読んでいるのか」を迷いながら読む状態になることです。
物語の読者は、目の前のシーンが「物語全体のどこにあるのか」を無意識に把握しながら読んでいます。
構成の枠があれば、作者はその地図を持ったまま書けます。
枠がない状態だと、作者自身も地図を持っていないため、読者も迷子になりやすい。
私が最初に長編を書いたとき、思いついた順に書き続けた結果、第3章で話が止まりました。
どこへ向かっているかわからなくなったためです。
そのとき初めて「構成を先に決める意味」がわかりました。
起承転結とは何か
起承転結は、4つのブロックで物語の流れを設計する枠組みです。
日本では特になじみの深い構造で、短編小説や一場面完結型の作品に向いています。
起承転結の4ブロックを整理する
起:物語の世界・人物を提示する
主人公とその日常、舞台となる世界を読者に伝えます。
「何がふつうの状態か」を示すことで、のちの「変化」が際立ちます。
情報を詰め込みすぎず、読者が物語に入れる程度の最低限の提示に絞るのがポイントです。
承:問題・葛藤を展開する
物語の問題が動き出すブロックです。
主人公が何らかの困難にぶつかり、葛藤します。
起承転結の中で一番ボリュームが大きくなりがちな部分です。
承が薄いと転のインパクトが出ないため、ここで読者を引き込む工夫が必要になります。
転:状況が大きく変化する
起承転結の核心です。
予想外の展開、情報の逆転、主人公の選択など、何らかの「変化」が起きます。
転が弱いと、読んだ後に「で、何が起きたの?」と感じさせてしまいます。
転を先に設計してから、承を逆算で組み立てる方法が有効です。
結:変化の後の着地を見せる
転で起きた変化の後、世界がどう変わったかを見せます。
解決が目的ではなく、「変化した状態を提示する」ことが結の役割です。
ハッピーエンドでも悲劇でも、結のトーンが作品の印象を決めます。
起承転結が向く場面・向かない場面
起承転結は、短編小説・一場面完結型・エピソードもの(章ごとに完結する連作短編など)に向いています。
転換点が1つしかないため、複数の主人公や複数の目的が絡む複雑な構造には向きません。
また、章数が多い長編では、転が1回だと物語の密度が薄くなりやすい点も注意です。
私が短編を書き始めた頃、転のインパクトをどう作るかにずっと迷っていました。
「転を先に設計して、承を逆算する」方法を知ってから、起承転結の使い方が変わりました。
この方法は後のセクションで詳しく説明します。

小説の技術を底上げする一冊
プロ作家が実践する執筆技術を、AIと組み合わせることでさらに効果的に活用できます。
三幕構成とは何か
三幕構成は、物語を「第一幕・第二幕・第三幕」の3つに分けて設計する方法です。
ハリウッドの映画脚本術から発展した構造で、中編〜長編小説に向いています。
三幕構成の3ブロックを整理する
第一幕(設定):日常・目的の設定・引き金となる出来事
主人公の日常と目的を提示し、物語を動かす「引き金」となる出来事(インサイティング・インシデント)が起きます。
第一幕の終わりには「ターニングポイント1(PP1)」があります。
主人公が日常から抜け出し、物語の本番に踏み込む瞬間です。
第二幕(対立):困難・葛藤の連続・クライマックス直前の最低点
物語の大部分を占めるブロックです。
主人公が目的に向かって進みながら、様々な困難にぶつかります。
第二幕の中間には「ミッドポイント」があります。
主人公の状況や認識に何らかの変化が生まれるポイントで、読者の関心を維持するために重要です。
第二幕の終わりには「PP2(ターニングポイント2)」があります。
クライマックス直前の「最低点」、主人公がもっとも追い詰められる瞬間です。
第三幕(解決):クライマックス・変化・結末
主人公が最低点から立ち上がり、クライマックスを迎えます。
物語の問題が解決(または失敗)し、主人公と世界がどう変わったかが示されます。
ミッドポイントがないと失速する
第二幕は物語の中でもっとも長いブロックです。
そのまま終わりまで進めると、中盤で読者の関心が薄れやすくなります。
ミッドポイントは、第二幕の中間で起きる「小さな転換」です。
情報の開示、主人公の内面的な気づき、状況の一時的な好転または急変など、何か動きがある場面を置くことで、読者の集中が続きます。
長編を書いていて「中盤がもたつく」と感じるときは、ミッドポイントが弱いか、存在しないことが多いです。
三幕構成を使うなら、ここは必ず意識してほしいポイントです。
次のセクションでは、起承転結と三幕構成のどちらを選ぶべきかを整理します。
起承転結と三幕構成、どう使い分けるか
どちらも物語の構成を助けるための道具ですが、向いている作品の規模と性質が違います。
| 項目 | 起承転結 | 三幕構成 |
|---|---|---|
| 向いている作品 | 短編・一場面完結 | 中編〜長編 |
| 転換点の数 | 1箇所(転) | 2箇所(PP1とPP2) |
| 覚えやすさ | 直感的で簡単 | やや構造が複雑 |
短編には起承転結が使いやすい
5,000字以下の短編、または1章完結のエピソードには起承転結が適しています。
転換点が1回であることが、短い尺に向いています。
一場面の中で主人公に「変化」を起こし、読者に何かを残す。
それだけに集中できるのが起承転結の強みです。
中長編・複数章には三幕構成が向く
2万字を超える中編や、章立てのある長編には三幕構成が使いやすくなります。
複数の転換点が物語の密度を保ち、読者を最後まで引き留める働きをします。
連作短編や同人誌の長編でも、全体を三幕構成で設計しておくと、章ごとの位置づけが明確になります。

起承転結で構成を組む実践ステップ
起承転結を使って構成を作るとき、私がすすめているのは「転から逆算する」方法です。
結論を先に決めて、そこへ向かう道筋を組み立てます。
欲求を1行で書くと葛藤が決まる
まず、「主人公は何を欲しがっているか」を1行で書きます。
「〇〇が欲しい」「〇〇になりたい」「〇〇を取り戻したい」、欲求の形で明確にします。
欲求が曖昧なまま構成を作ると、承での「葛藤」が何に向かっているのかが見えなくなります。
転を先に決めると承が逆算できる
転でどんな変化が起きるかを先に決めます。
「予想外の事実が明かされる」「主人公が決断を迫られる」「関係性が逆転する」など、具体的な場面として想像できるくらい詳しく決めます。
転が決まったら、「そこへ至るために必要な葛藤は何か」を逆算して承を設計します。
転を「結果」として、承を「原因の積み上げ」として考える順序です。
起は最小限の情報だけ出せばいい
起に詰め込む情報は最小限にします。
「この主人公は何者で、今どんな状況にいるか」、それだけで十分です。
説明文で語ろうとすると起が長くなりすぎます。
主人公の行動や会話を通じて自然に伝えるほうが、読者にとっても読みやすくなります。
結は解決じゃなく変化を見せる場所
結は「問題を全部解決する場所」ではありません。
転で起きた変化の後、世界と主人公がどんな状態になったかを見せる場所です。
短編であれば、結は短くて構いません。
1〜2場面で余韻を残す形が、読後感を良くすることが多いです。
私が最初に起承転結で書いたとき、承を膨らませすぎて転のインパクトが薄れてしまいました。
転を先に設計して逆算する方法に変えてから、構成のバランスが取りやすくなりました。
起承転結テンプレート(記入例付き)
以下の欄を埋めると、1作品分の起承転結が完成します。
【主人公の欲求】
例:失った記憶を取り戻したい
【起】(日常・世界・人物の提示)
・主人公の普段の状態:記憶のない状態で目覚める
・舞台設定(時代・場所など):現代・とある病院
・読者に伝える最低限の情報:主人公が何者か、何を失っているか
【承】(問題・葛藤の展開)
・主人公にぶつかる困難:手がかりを探すが、真実に近づくほど恐ろしくなる
・葛藤の中心(何と何の板挟みか):「知りたい」と「知るのが怖い」の葛藤
・承のクライマックス(転の直前に起きること):真実を知る一歩手前に辿り着く
【転】(状況の大きな変化)
・何がどう変わるか:失った記憶は「自分で消した」ものだと判明する
・読者が「予想していなかったこと」は何か:忘れたのではなく、消した
【結】(変化の後の世界)
・主人公はどういう状態になったか:記憶を取り戻さないことを選ぶ
・読者に残したい余韻は何か:消した理由が「誰かを守るため」だった余韻Code language: plaintext (plaintext)
三幕構成で組む実践ステップ
三幕構成で構成を作るときも、「PP1(ターニングポイント1)」から設計を始めると組みやすくなります。
PP1を先に設計すると流れが見える
PP1は「主人公の日常が変わる瞬間」です。
これが決まると、第一幕(PP1より前)と第二幕(PP1から先)の流れが見えてきます。
「主人公が断れないような出来事」「引き返せなくなる決断」など、主人公が物語の本番に踏み込む瞬間を具体的に設定します。
最低点はクライマックスとセット
PP2は「主人公がもっとも追い詰められる場面」です。
クライマックスの直前に置かれ、主人公が一度「もうだめかもしれない」と感じる瞬間です。
最低点を先に設計しておくと、第二幕でどの程度まで主人公を追い詰めればいいかの見当がつきます。
ミッドポイントがないと失速する
第二幕の中間(全体の50%地点あたり)に、何らかの動きを置きます。
主人公が重要な情報を手に入れる、一時的に状況が好転する、逆に急変するなど、「このまま読み続けないと見逃す」と読者が感じる場面を設計します。
私が長編を書くとき、三幕構成のワークシートを1枚書いてから着手するようにしています。
特にミッドポイントを先に決めておくと、第二幕の中盤が失速しにくくなりました。
解決シーンは主人公の変化を中心に描く
第三幕は問題を解決する場所ですが、「何が解決したか」より「主人公がどう変わったか」を中心に描くと、読後感が出やすくなります。
物語の問題が外部の出来事として解決しても、主人公の内面に変化がなければ、読者には「で、結局どうなったの?」と感じさせてしまいます。
三幕構成テンプレート
以下の欄を埋めると、三幕構成の設計図が完成します。
【主人公の目的・欲求】
例:憧れのバンドのメンバーに認められたい
【第一幕(設定)】
・主人公の日常:音楽を好きなのに、人前で弾けない高校生
・目的(何を達成したいか):あるバンドのオーディションを通過する
・PP1(引き金となる出来事):たまたま動画撮影され、それが注目されてしまう
← ここから物語の本番へ
【第二幕(対立)】
・PP1直後の主人公の状況:注目されたことで逃げられなくなる
・ミッドポイント(第二幕中間で起きること):あこがれのメンバーに素の演奏を聴かれる場面
・第二幕での主な困難・葛藤:自分が「本当に好きで弾いているのか」がわからなくなる
・PP2(最低点):オーディション直前に音楽自体が嫌いになりかける
← 主人公がもっとも追い詰められる瞬間
【第三幕(解決)】
・クライマックス(主人公の最後の選択・行動):下手でもいいと決めてオーディションを受ける
・問題の解決(または失敗):結果は不合格だったが、演奏は続けることを選ぶ
・主人公の変化(内面的な成長・変容):「認められるため」から「好きだから」へ目的が変わった
・結末(世界の状態):主人公はひとりで演奏している。今度は誰かのためでなくCode language: plaintext (plaintext)

よくある質問
Q. 起承転結と三幕構成どちらが先?
短編から書き始めるなら起承転結を先に覚えることをすすめます。
4ブロックのシンプルな枠組みで、1作品分の構成を直感的に設計できます。
起承転結で短編を何本か書いた後、長編に挑戦するタイミングで三幕構成に移行するのが自然な流れです。
Q. 構成で縛られる感じになる
構成はあくまで「最初の設計図」です。
書き進める中で変更しても問題ありません。
むしろ、書いていて「ここはもっと膨らませたい」「この転換点はここじゃない気がする」と感じるのは、物語への理解が深まっているサインです。
構成は固定ルールではなく、いつでも書き直せる下書きとして使うのが向いています。
Q. 短編に三幕構成は使える?
使えます。
その場合、短編では第二幕を非常にコンパクトにする必要があります。
5,000字以下の短編で三幕構成を使う場合、PP1を冒頭に近い位置に置き、ミッドポイントを省略する形にすることが多いです。
短編では起承転結のほうがシンプルに機能しやすい場合がほとんどです。
Q. 転が思いつかないときの対処は?
「読者が予想している結末の反対」を考えてみてください。
主人公が成功しそうな流れなら失敗させる、失敗しそうな流れなら思わぬ形で好転させる。
あるいは問題自体が別の問題に変わる——読者の予想を「ずらす」方向で考えると、転のアイデアが出やすくなります。
Q. 構成なしで書き始めてもいい?
書き始めること自体は問題ありません。
ただ、書き上がった後に「この話、どこへ向かっていたんだろう」と感じる状態になりやすいです。
書き終わった後に起承転結や三幕構成に当てはめてみると、どこが弱かったかが見えることが多いです。
「後から構成を当てはめる」使い方も、十分有効です。
まとめ
起承転結は短編・一場面完結に向いた4ブロックの枠組みで、三幕構成は中編〜長編に向いた3ブロックの枠組みです。
どちらも転換点の設計が物語の核になります。
構成の枠を使っても、書きながら変えていくことは普通のことです。
最初に立てた設計通りに書き切るのではなく、書きながら気づいたことを構成に反映させていく。
その往復が、物語をより良くします。
まずはテンプレートを使って、1作品分の起承転結か三幕構成を書いてみてください。
埋めていくうちに「自分が書きたいのはどんな話か」が見えてきます。
構成力を鍛えるおすすめ本
起承転結・三幕構成を使いこなし、物語の骨格を作る力を養う3冊です。
小説の構造を体系的に学べる一冊。三幕構成とプロット設計の実践的な解説が詰まっています。
キャラクターの動機と構成の連動を学べます。承・転の設計に役立つ視点が得られます。
スティーブン・キングの創作論。物語の構造への向き合い方を再定義してくれる必読書です。
※本記事にはAmazonアソシエイトのリンクが含まれています。
AI夢小説テンプレート
名前を2つ書き換えるだけで、
推しと物語が動き出す。
ChatGPT / Claude / Gemini 対応
全8セット|各300円(セール中)
✨ BOOTHショップを見る ✨※ BOOTH のショップに移動します





