書いたセリフを読み返して「なんか棒読みだな、台本みたいだな」と感じたことがある。
キャラクターが喋っているはずなのに、どこか台本を読んでいるような平坦さと単調さがある。
6回推敲してもそのままだったりする。
その原因はセリフの「中身」よりも、セリフの「設計」にあることが多いです。
設計の問題であれば、直し方があります。
この記事では、海外の書き手が動画で語った「セリフとキャラクターボイスの技術」を和訳・解説します。
平坦なセリフの原因から、全キャラが同じ声になってしまう理由、セリフ文の句読点ルールまで、3本の動画から夢小説書きが今日から使える技術を取り出しました。
海外の書き手が対話とキャラボイスを語る3本を選んだ理由
英語圏の書き手コミュニティでは、「セリフが上手い」は「リアルな話し方を再現している」とは少し違う意味で使われます。
物語のセリフは「現実の会話の記録」ではなく、「現実の会話の錯覚を作る設計物」です。
セリフが平坦になる原因として挙げられるのは、「サブテキスト(言葉の裏)がない」「全キャラが書き手の声で喋っている」「セリフ文の基礎ルールが崩れている」の3点です。
今回の3本は、それぞれの問題に的を絞っています。
3本を通じて見えてくるのは、「セリフは感情の設計であり、技術は学べる」の共通した視点です。
動画①は「セリフが何を言っているか」から「セリフが何をしているか」への視点の転換。
動画②は「全員同じ声」から「一人一人の声」への設計の転換。
動画③はセリフを文章として正確に扱う技術の基礎。
3本を通じて読むと、セリフ設計の全体像が見えます。
①「セリフが平坦になる理由」|Abbie Emmons
Abbie Emmonsとは?
Abbie Emmonsは、キャラクターアークや物語構造を専門に発信するアメリカのライターYouTuber。
登録者数は58.2万人。
この動画では、推敲を繰り返しても平坦なままのセリフの構造的な原因を解説しています。
平坦なセリフの正体とは
「セリフが平坦なのは言葉の選び方の問題ではない。セリフが何をしているかの設計の問題だ」——Abbieのこの視点が、すべての出発点になります。
Abbieが挙げる平坦なセリフの原因は、主に3つです。
原因1:副詞への依存
「彼は悲しそうに言った」「彼女は怒りをあらわにして答えた」。
こういった副詞・形容詞の「説明」は、感情を読者に渡すのではなく、感情を「告知」しています。
スティーブン・キングの言葉「地獄へ続く道は副詞で舗装されている」が象徴するように、セリフの周辺に副詞が多いほど、読者の感情体験は薄くなります。
副詞を取り除いた後に残るのは、その感情を示す行動・セリフの語尾・言葉の選び方です。
「悲しそうに言った」の代わりに、台詞の後の沈黙、視線の動き、1単語だけ変わる返答で「悲しさ」を示します。
原因2:サブテキストの不在
セリフが平坦に聞こえるもう一つの原因は、「キャラクターが思ったことをそのまま全部言っている」設計です。
現実の会話では、人は思ったことの3割も言いません。
言えないこと、言いたくないこと、言い方を変えること、沈黙することが「会話のリアリティ」を作ります。
サブテキストとは、セリフの「裏にあること」です。
「大丈夫」と言いながら大丈夫ではないキャラクター。
「別にどうでもいい」と言いながら気にしているキャラクター。
その「言っていないこと」が、読者を引き込みます。
原因3:ダイアログタグの問題
「と彼は言った」「と彼女は叫んだ」。
セリフタグ(ダイアログタグ)の動詞に「叫ぶ・囁く・唸る」といった感情動詞を多用すると、かえってセリフが安っぽくなります。
「言った(said)」はほぼ透明なタグです。
読者の目が滑らかに通り過ぎます。
代わりにアクションビート(行動描写)を使うと、セリフの前後に映像が生まれます。
副詞を取り除いてアクションビートに置き換えると、セリフシーンは短くなることが多いです。
でもその分、密度が上がります。
「5行で説明したこと」を「2行の行動と1行のセリフ」で表現できると、読み手は自分の感情を使って空白を埋めます。
その感情体験が「引き込まれる」の感覚です。
推しのセリフがリアルでない理由
夢小説で推しのセリフを書くとき、「原作っぽくない」と感じることがあります。
原因の多くは、「推しが頭の中で思っていることをそのまま言っている」設計にあります。
原作の推しは、大切なことほど直接言いません。
遠回りに言う、別の話題で誤魔化す、短く言い切る、あるいは何も言わない。
そのキャラクターらしい「言わない方法」を知ると、セリフが原作に近くなります。
Abbieの「サブテキスト」の考え方は、推しの「言わない設計」を体系化するツールです。
「このキャラクターは本音を言うとき、どういう迂回路を使うか」を知ると、セリフ一本の書き方が変わります。
私が実践している方法として、推しのセリフを書いた後に「このセリフ、推しは本当はどういうつもりで言ったのか」を心の中で確認します。
表の言葉と裏の気持ちにギャップがある場合、そのセリフは機能しています。
ギャップがなければ、もう一度サブテキストを仕込み直します。
誰が話しているか分からなくなる
推しらしさが消えてしまう
読むだけで誰のセリフか分かる
推しの存在感がセリフで伝わる
言わないセリフを設計するプロンプト
私は夢小説を書いています。
以下の「推しが本当に伝えたいこと」を直接言わずに、サブテキスト(言葉の裏)を使って表現するセリフシーンを書いてください。
【推しキャラクターの名前と性格(例: 感情を表に出さない、口数が少ない、など)】:
【推しが本当は伝えたいこと(例: 夢主を心配している、など)】:
【推しが実際に言うセリフの方向性(例: 「別に、お前がどうしようが関係ない」のように逆の言い方、など)】:
【場面の状況】:
出力:
1. サブテキストを使ったセリフシーン(300〜400字)
2. このシーンで「言っていないこと」の解説
3. このキャラクターのサブテキストパターン(今後の場面でも使えるコツ)

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②「キャラクターボイスを無理なく書く方法」|Abbie Emmons
全員同じ声になる理由
全キャラクターが書き手自身の声で喋ってしまう——この現象には、原因と直し方があります。
キャラボイスは何を見るかで決まる
「キャラクターボイスは性格設定から自動的には生まれない。そのキャラクターの『見る目』と『気にするもの』の設計から生まれる」——Abbieのこの言葉が、ボイス設計の核心です。
同じ部屋に入ったとき、どのキャラクターも同じものを見ません。
あるキャラクターは部屋の出口を先に確認する。
別のキャラクターは人の表情を見る。
また別のキャラクターは壁の色を見る。
その「最初に何を見るか」が、そのキャラクターの「頭の中のフィルター(mental filter)」です。
Abbieが提示するキャラクターボイスの設計法は、次の4つの問いに答えることから始まります。
問い1:このキャラクターはどんな語彙を使うか
教育水準、育ち、職業、年齢によって語彙は変わります。
砕けた口語体を使うキャラクター、硬い表現を好むキャラクター、専門用語が自然に混じるキャラクター。
語彙はキャラクターの背景を無言で語ります。
問い2:このキャラクターはどんな文の長さで話すか
長い文で丁寧に説明するキャラクターと、短く言い切るキャラクターでは、リズムが違います。
緊張すると一気に喋るキャラクターと、緊張すると黙るキャラクター。
文の長さのパターンがボイスを作ります。
問い3:このキャラクターは何を最初に気にするか
感情、論理、人間関係、プライド、実利。
何を優先するかで、同じ状況でも言う内容が変わります。
合理的なキャラクターは感情ではなく結果を先に言う。
感情的なキャラクターは理由より気持ちを先に言う。
問い4:このキャラクターが言わないことは何か
あるキャラクターが絶対に使わない言葉、避けるテーマ、話題を変えるパターン。
「言わないこと」がボイスを独自にします。
原作ぽくなる理由
ファンフィクションや夢小説を長く書いてきた人が「原作ぽい推しが書ける」のは、原作を繰り返し読む中で推しの「頭の中のフィルター」を自然に身につけているからです。
意識的にやるなら、「このキャラクターが絶対言わない言葉のリスト」を作るのが近道です。
推しが「普通に感謝を言える」キャラクターか、「感謝を遠回りにしか言えない」キャラクターかを明確にするだけで、セリフの方向性が自然に決まります。
Abbieの「フィルターの設計」は、オリジナルキャラクターを書くときに特に力を発揮します。
自分で作ったキャラクターが全員同じ声に聞こえるなら、それぞれの「最初に何を見るか」を1つ決めるだけで、声の分離が始まります。
夢小説で言えば、「夢主の声が自分の声と同じになってしまう」問題も同じ方法で解決できます。
夢主が「最初に何を気にするか」を1つ設定するだけで、夢主がただの「視点カメラ」ではなく、「一人のキャラクター」として立ち始めます。
誰が話しているか分からなくなる
推しらしさが消えてしまう
読むだけで誰のセリフか分かる
推しの存在感がセリフで伝わる
キャラボイスを設計するプロンプト
私は夢小説を書いています。
推しキャラクターのボイス設計をして、同じ状況を別のキャラクターと書き比べてください。
【推しキャラクター名と性格の概要】:
【推しが「最初に何を気にするか」(例: 相手の感情状態、状況の効率性、など)】:
【推しが使わない言葉や話し方(例: 感情的な表現、弱音を直接言うこと、など)】:
【シーン:夢主が「疲れた」と言う場面】:
出力:
1. 上記のキャラクターボイス設計に基づいたセリフシーン(300字)
2. 全く違うタイプのキャラクターが同じ「夢主が疲れたと言う場面」に反応するセリフシーン(300字)
3. 2つのセリフの違いを生んだ「フィルター」の解説

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③「セリフ文の句読点ルールを覚える」|Diane Callahan
チャンネル: Quotidian Writer(Diane Callahan) | 登録者: 約18万人
動画タイトル(原題): Dialogue Punctuation Rules for Fiction Writers
Diane Callahanとは?
「Quotidian Writer」のDiane Callahan。
この動画では、英語圏の出版社が採用するシカゴ・マニュアル・オブ・スタイル(CMoS)に基づいた、小説セリフの句読点・ダイアログタグの正確な書き方を解説しています。
ダイアログタグとビートの違い
「セリフ文の句読点ミスは、出版業界で最も多く見かける初心者エラーの一つ。でも覚えれば絶対に直せる」——Dianeのこの動画は、そこから始まります。
日本語の夢小説においても、英語圏のセリフ設計の「考え方」は参考になります。
特に「ダイアログタグ」と「アクションビート」の区別は、日本語の夢小説にも直接応用できます。
ダイアログタグとは
「と彼は言った」「と彼女が尋ねた」のような、セリフに続く「誰が言ったかを示す動詞句」です。
said(言った)、asked(尋ねた)がほぼすべてで、それ以外の感情動詞(叫んだ・囁いた)は使いすぎると安っぽくなります。
Dianeが強調するのは「saidはほぼ透明になる」の考え方です。
読者の目は「と言った」を読まずに通過します。
感情的な動詞(とため息をついた・と怒鳴った)は、使うたびに読者の目を引き止めます。
頻繁に使うと疲れます。
アクションビートとは
セリフの前後に置く「その人物の行動描写」です。
「椅子から立ち上がり、背を向けた。
『もう話すことはない』」のように、行動がセリフに文脈と感情を乗せます。
アクションビートはセリフタグと違い、誰のセリフかを示しながら場面の映像も作れます。
Dianeが勧めるのは「ダイアログタグとアクションビートを交互に使う」のリズムです。
「言った」を透明に使いながら、要所にアクションビートを挟むと、セリフが単調にならず、場面の動きも保てます。
また、Dianeは「セリフの前後を区切るコンマ・ピリオドの置き方」を具体例と練習問題で解説しています。
英語のルールは日本語には直接適用できませんが、「行動でセリフを挟む」「タグを目立たせすぎない」の設計思想は日本語の夢小説にそのまま使えます。
動画はキャラクターが発話する文章の構造を、学習しやすい形で整理しています。
「初心者がよくやるミス」「中級者がやりがちな過剰表現」を対比しながら解説する構成で、自分のどの段階の問題かが見つかりやすいです。
コメント欄でフランス語話者や日本語話者が「これで英語のセリフが書けるようになった」と書いているほど、説明が明快です。
「と彼は言った」の処理が変わると
夢小説でセリフを書くとき、「と○○は言った」「と彼女は答えた」を何度も繰り返すと、会話シーンがテンポを失います。
Dianeのアクションビートの考え方を使うと、「と言った」の代わりに短い行動描写でセリフの帰属を示せます。
「視線を外した。
『関係ないだろ』」のように、行動がセリフタグの代わりをしながら、同時にキャラクターの感情状態を示します。
「セリフタグを減らしてアクションビートに置き換える」の練習を自分の過去作で1場面やってみると、会話シーンの密度が変わります。
セリフと行動が交互にあるシーンは、読み手が場面の映像を追いやすくなります。
日本語の夢小説では「〜と○○は言った」のタグをほぼ全カットして、アクションビートだけで誰が喋っているか示す書き方が可能です。
短い場面でキャラクター2人だけのシーンなら、タグなしでも読み手が混乱しない書き方ができます。
Dianeの動画はこの技術の原則を英語で体系化したものです。
誰が話しているか分からなくなる
推しらしさが消えてしまう
読むだけで誰のセリフか分かる
推しの存在感がセリフで伝わる
アクションビートのプロンプト
私は夢小説を書いています。
以下の「セリフタグが多い会話シーン」を、アクションビート(行動描写)を使って書き直してください。
【現在の会話シーン(2〜4往復分)】:
(例:「大丈夫?」と夢主は心配そうに聞いた。「別に」と彼は答えた。「本当に?」と夢主は続けた。「うるさい」と彼は言った。)
【登場するキャラクターの関係性】:
【このシーンの感情の雰囲気(例: 緊張、照れ、怒り、など)】:
出力:
1. アクションビートを使って書き直したシーン(セリフタグを最小化)
2. 使ったアクションビートの一覧とその効果
3. 元のシーンとの比較:何が変わったか

よくある質問(FAQ)
Q. キャラボイスはどこから始める?
一番手軽な方法は「このキャラクターが絶対言わない言葉リスト」を3つ作ることです。
たとえば「感謝を直接言わない」「弱音を吐かない」「丁寧語を使わない」。
この3つだけで、セリフの書き方の方向性が変わります。
言わないことを決めると、言うことが自然に見えてきます。
もう一歩進めるなら、そのキャラクターが「初対面の人に対して」「信頼している人に対して」でどう言い方を変えるかを設計すると、関係性の変化もセリフで表現できます。
Q. サブテキストで伝わらない?
サブテキストが機能するのは、「それを言わない理由が読者に見えているとき」です。
読者がキャラクターの内的葛藤や感情を理解した上でサブテキストがあると、「言っていないのに伝わる」体験が生まれます。
説明しすぎるより、少し足りないくらいの方がちょうどいいです。
サブテキストが伝わらない場合は、そのセリフの前でキャラクターの感情状態が十分に示されていない可能性があります。
サブテキストと感情描写はセットで設計します。
Q. saidばかりはくどい?
「言った」はくどくなりません。
むしろ「叫んだ・囁いた・唸った」を多用する方が、かえってくどくなります。
「言った」は読者の目を止めません。
感情動詞は止めます。
大切な場面で感情動詞を1回使う方が、毎回使うより効果があります。
アクションビートとのバランスで変化をつけましょう。
Q. 夢主のセリフにも個性は必要?
出した方が物語の立体感が増します。
夢主のボイスは「読者の分身」として機能することが多いですが、それでも「この夢主特有の言い方」が1〜2点あると、夢主がキャラクターとして生きます。
夢主が「絶対使わない言い方」を1つ決めるだけで、声が立ちます。
Q. セリフのリズムが一本調子です
文の長さの変化が少ない場合に起きやすいです。
短いセリフの後に少し長いセリフを置く、沈黙(行動描写のみの段落)を挟む、セリフの語尾を変える(言い切り・途切れ・問い)のバリエーションを意識すると、リズムに起伏が出ます。
音読が最も効果的な修正方法です。
リズムが一本調子な場所は、声に出すと「ここで息が詰まる」感覚として現れます。
止まった場所を書き直すと、文章のリズムが改善されます。
まとめ
セリフは「現実の会話を再現するもの」ではなく、「現実の会話の錯覚を設計するもの」です。
平坦なセリフに副詞ではなく行動を与え、全員が同じ声で喋るキャラクターに「頭の中のフィルター」を与え、会話シーンのタグをアクションビートで立体化する。
この3つを意識するだけで、推しのセリフが1段階変わります。
夢小説は推しの声を書く場所です。
推しの「言わないこと」「迂回する言い方」「特有のリズム」を設計できると、「原作のあの人がそこにいる」感覚が生まれます。
その感覚を作る技術が、今回の3本に詰まっています。
セリフは物語の中で「最も密度の高い言語空間」です。
1行のセリフに、キャラクターの性格・感情状態・相手との関係性・物語の状況が全部入ります。
その密度を意識しながらセリフを書くと、1行1行の重みが変わります。
夢小説はセリフが多い形式で書かれることが多く、その分セリフの質が物語全体を左右します。
今日から始めるなら、動画①のプロンプトで推しの「サブテキスト1パターン」を書き出してみてください。
「このキャラクターは感謝をどう言わないか」の1行が、次の場面の入口になります。
今日の一歩: 推しのセリフを1つ選び、「このセリフの裏に何がある?」を1文書き出してください。そのギャップが、推しの声をリアルにする設計の始まりです。
並走しています。




