灯は律に片想いをしていて、律は灯を信頼している。 同じ二人の間にある気持ちを「仲がいい」とまとめてしまうと、次の場面で律にどんな返事をさせるかで手が止まります。
相関図は人物の名前を並べる前に、誰から誰へ、どんな関係で、どの章の話かを一行ずつ書き出すと作りやすくなります。 その一行を一本の矢印へ移せば、灯の片想いは灯から律への矢印のまま残せます。
この記事では4人の関係メモを入力表にし、紙や使い慣れた作図ツールで図へ移す手順を扱います。 次の章で変わった線だけを書き換えるところまで進みます。
私は、図をきれいに整えることより、次の場面で誰に何を言わせるかが決まる図にしたいです。
灯・律・澪・朔は、この記事の説明用に作った架空の人物です。 実在の作品や、AIが実際に返した答えではありません。
この記事では4人で試します。 自分の作品では、その場面に必要な人数で構いません。
創作の相関図には何を書く?
相関図に書くのは、人物名、表向きの関係、関係の向き、短い関係名、章や時点の5項目です。 顔の絵や写真は用意しなくても作り始められます。
書く項目ごとに、図のどこへ置くかを先に決めておくと、線を引く段階で迷いが減ります。 説明用の4人で記入すると、次のようになります。
表は横へスクロールできます。
| 書く項目 | 記入例 | 図へ移す場所 |
|---|---|---|
| 人物名 | 灯/律/澪/朔 | 四角の図形の中 |
| 表向きの関係 | 灯と律と澪は同じ劇団、朔は公演を手伝う協力者 | 名前の下に小さく添える |
| 関係の向き | 灯から律へ | 矢印の始点と終点 |
| 関係名 | 片想い | 矢印の近くに置く短い文字 |
| 章 | 第1章 | 図の題名とファイル名 |
表の中で、「表向きの関係」と「関係名」は別の行にしています。 同じ劇団にいることは周りから見ても変わらない立場で、片想いや信頼は本人の内側にある気持ちだからです。
立場は人物一人ずつに付き、気持ちは二人の間に向きを持って生まれます。 この違いを書く段階で分けておけば、図にするときは立場を名前の下へ、気持ちを矢印へ置くだけで済みます。
次は、この項目を4人分の入力表に書き、矢印へ移していきます。
関係メモを図にするには?
場面に必要な人物を選び、表向きの関係と気持ちを一行ずつ書いてから、その一行を一本の線へ移します。 いきなり図形を並べるより、先に文字で書いたほうが、向きの取り違えに気づきやすくなります。
その場面に必要な人物を選ぶ
今書こうとしている場面に出てくる人物だけに絞ります。 作品全体の登場人物をすべて置くと線が増えすぎて、その場面で誰の気持ちを動かすのかが埋もれてしまいます。
この記事では、灯・律・澪・朔の4人を例にします。 人物名はメモの中で一つの表記にそろえ、愛称や名字で書いた行が混ざらないようにします。
名字と愛称を混ぜると、別の人物か同じ人物かが読み取りにくくなります。 図では「律」、メモでは「律(愛称:りっちゃん)」のように、呼び名を対応させておくと迷いません。
関係と気持ちを別の行に書く
灯と律と澪が同じ劇団にいることと、灯が律に片想いしていることは、別の行に書きます。 立場の行は人物ごとに一行、気持ちの行は二人の組み合わせと向きごとに一行にします。
4人の立場を一人ずつ書くと、メモは次の4行になります。
- 灯:劇団に所属する
- 律:灯と同じ劇団に所属する
- 澪:灯と同じ劇団に所属する
- 朔:公演を手伝う協力者
気持ちの行を書くときは、「同じ劇団だから仲がいい」と立場から気持ちを決めつけないようにします。 同じ劇団の仲間同士であっても、律から灯へは信頼、灯から律へは片想いと、向きによって中身が違います。
一方向の気持ちを矢印にする
灯から律への片想いと、律から灯への信頼は、両端に矢じりの付いた一本の線にまとめません。 向きの違う2本の矢印を引き、それぞれに関係名を書きます。
入力表では、一行が一本の矢印に対応します。 第1章の4本を書き出すと、次のとおりです。
表は横へスクロールできます。
| 章 | 誰から誰へ | 関係名 |
|---|---|---|
| 第1章 | 灯→律 | 片想い |
| 第1章 | 律→灯 | 信頼 |
| 第1章 | 澪→灯 | 相談相手 |
| 第1章 | 朔→律 | 疑い |
「誰から誰へ」の左側が矢印の始点、右側が終点になり、関係名は矢印の近くに置く文字になります。
この例の「澪→灯:相談相手」は、澪が灯に相談する向きです。 矢印の先にいる灯が、澪にとっての相談相手になります。
灯と律の間は向きの違う2本にし、それぞれへ「片想い」「信頼」の文字を添えます。 同じ二人の気持ちを一本の両矢印へまとめると、この違いを読めなくなるためです。
図1は入力表の4行を図へ移した説明用の作例です。 「澪→灯:相談相手」は澪が灯に相談する向きで、顔画像を使わずに名前・矢印・関係名で読めるようにしています。
図1と同じ配置で名前と矢印を置く
紙と筆記具、または使い慣れた作図ツールを用意します。 まず図1と同じ配置で、入力表の4行を写してみます。
- 白紙の上に「第1章」と書きます。
- 左上に灯、右上に律、左下に澪、右下に朔を置き、名前を四角で囲みます。灯・律・澪の下に「劇団」、朔の下に「協力者」と添えます。
- 入力表の左の名前から右の名前へ線を引き、終点側だけに矢じりを付けます。灯→律と律→灯の2本は、図1のように上下へ離して描きます。
- 灯→律に「片想い」、律→灯に「信頼」、澪→灯に「相談相手」、朔→律に「疑い」を添えます。
- 入力表の一行ずつについて、始点の名前・終点の名前・関係名が図と同じかを見ます。
紙なら手書きで、デジタルなら名前の図形・線・文字を置ける機能を使います。 機能名や操作方法はツールごとに違うので、今使っている道具で同じ名前・向き・関係名を描ければ構いません。
矢印は色だけで意味を分けず、向きと文字で読めるようにしておきます。 白黒で印刷したときや、色の区別がつきにくい画面で開いたときに、関係名の文字が残っていれば向きと中身を読み取れます。
メモを表へ移す補助にAIを使う
章をいくつも書き進めると、メモの中の関係を入力表へ書き写す行が増えていきます。 メモを表へ移す補助として、AIへ渡す指示文を使えます。
返ってきた表は、図を描く前に、元のメモと向きや関係名を比べます。
この指示文は説明用に作った例で、実際にAIへ送って返答を得たものではありません。 入力表は手で書けるので、AIを使わずに、この記事の手順をすべて進められます。
次の関係メモを読み、今の章で確定している関係だけを表にしてください。
列は「章」「誰から誰へ」「関係名」「根拠にした記述」です。
一方の気持ちを相手の気持ちへ反転させないでください。
入力メモにある人物の組み合わせと向きだけを行にしてください。
書かれていない全組み合わせや逆方向の行は増やさないでください。
メモに「未確定」と記された関係は、そのまま「未確定」と書いてください。
関係の変化は根拠の記述があるものだけを採用してください。
【対象の章】[ここに章名]
【人物と関係のメモ】[ここに自分のメモ]
コピーしたら、[ここに章名]と[ここに自分のメモ]の2か所を、自分の作品の章名と関係メモに差し替えます。 この記事の4人で第1章を入れるなら、差し替える部分は次のようになります。
【対象の章】第1章
【人物と関係のメモ】
灯・律・澪は同じ劇団にいる。朔は公演を手伝う協力者。
灯から律へ:片想い
律から灯へ:信頼
澪から灯へ:相談相手(澪が灯に相談する)
朔から律へ:疑い
返答が出たら、表を元のメモと一行ずつ突き合わせます。
- 人物名がメモと同じ表記になっているか
- 「灯→律」と「律→灯」の向きが入れ替わっていないか
- 対象の章と違う章の関係が混ざっていないか
- メモにない組み合わせや逆方向の行が増えていないか
- メモの「未確定」が勝手に確定した関係へ変わっていないか
灯と律の2行が「両想い」や「信頼し合う」のような一本の関係にまとまっていたら、メモにない関係なので採用しません。
未公開の作品やメモを外部AIへ渡す前に、そのサービスの保存・学習・共有条件を読んで送る範囲を決めます。 送信したくない情報があるときは、手元で入力表を書けば、その後の作図を同じ順で進められます。
線が重なって読めないときは?
視点人物と関係のある人物を近くに置き、場面に必要な線を選び、長い説明は図の外へ出します。 線を消すより先に、人物の置き方と線に書く文字の量を変えていきます。
視点人物と近い人物を寄せる
視点人物と直接つながる人物を近くに置くと、その場面で読む線を追いやすくなります。 この記事の図では、灯を左上、律を右上に置き、澪を灯の下、朔を律の下に並べています。
灯と律の2本は上下へ曲げて離し、澪と朔から出る線はそれぞれ上へ向けました。 配置に唯一の正解はないので、自分が追う場面の人物に合わせて寄せ直せます。
同じ劇団の3人を同じ色で塗る方法はありますが、色の区別がつきにくい画面では所属が読み取れないため、名前の下の「劇団」「協力者」の文字は残しておきます。
人物を動かしたら、線の端がどの名前につながっているかを見直します。 別の人物へ向いた線が残っていたら、入力表の始点と終点に合わせて描き直します。
その場面に必要な線を選ぶ
同じ場面で使わない関係は、その場面の図から別の図へ移します。 たとえば朔が出てこない場面を書くなら、朔から律への「疑い」はその場面の図から外し、4人全員を載せた図のほうに残します。
線を外しても、関係そのものは入力表の行としてそのまま残ります。 図は場面ごとに軽くし、設定の全体は入力表に預けておく分担にすると、どちらも読みやすさを保てます。
長い理由は図の外へ出す
線の上には「片想い」「信頼」のような短い関係名だけを置きます。 なぜ片想いなのか、どの台詞でそう読めるのかは、線に番号を振って図の外のメモへ書きます。
たとえば「片想い①」と書いた線に対して、メモに①の行を作り、根拠にした場面や台詞を書き写します。 図とメモに同じ番号があれば、図を小さく表示しても、理由をたどる道は残ります。
線が込み入ってきたら、図を触る手をいったん止めて、この記事の入力表に戻ります。 自分の作品の人物で「章/誰から誰へ/関係名」の3列を書き、今書く場面に出ない人物の行へ印を付けると、図に残す線がはっきりします。
次の章で関係が変わったら?
旧図を残したまま、変化を生んだ場面と新しい関係名を書き、該当する一本の線だけを書き換えます。 図を丸ごと作り直したり、旧図に上書きしたりすると、どの章で何が変わったのかを後からたどれなくなります。
旧図に章名を付けて残す
図には、どの時点の関係かが読める名前を付け、章ごとの版を残します。 たとえば「相関図_第1章冒頭」と「相関図_第2章終了後」のように、章と時点を名前に入れます。
紙で作った図は、上に「第1章」と書いた元の一枚を残します。 第2章用には別紙へ人物と線を写し、章名を「第2章」にします。
デジタルで作った図は、使うツールの複製や別名保存の方法で第2章用の版を作ります。 「相関図_第1章」と「相関図_第2章」のように区別してから、第2章版を編集します。
操作方法はツールによって異なります。 編集を始める前に、第1章の版が残っているかを見ておきます。
変わった場面を記録する
線を書き換える前に、関係が変わった理由になる場面を一行で書き残します。
この架空例では、第2章で律が朔の困りごとを手伝います。 その後、朔が律への疑いを解き、協力すると決めた設定です。
メモに「第2章:律に助けられた朔が疑いを解き、協力を決める → 朔→律を疑いから協力へ」と書いておけば、後で図を開いた自分にも変化の理由が伝わります。
該当する線だけ書き換える
第2章用に写した紙、または複製したデジタルの図で、朔→律の「疑い」を「協力」へ書き換えます。 矢印の向きと、ほかの3本の関係名はそのままにして、第2章の版として残します。
第1章と第2章を並べると、変わったのは一行だけになります。
表は横へスクロールできます。
| 線 | 第1章 | 第2章 |
|---|---|---|
| 灯→律 | 片想い | 片想い(変更なし) |
| 律→灯 | 信頼 | 信頼(変更なし) |
| 澪→灯 | 相談相手 | 相談相手(変更なし) |
| 朔→律 | 疑い | 協力(律に助けられた後、朔が疑いを解き、協力を決める) |
この図で更新する根拠は、朔が律への疑いを解いて協力すると決めたことです。
灯と律の間で気持ちが変わった場面は、この例にはありません。 灯と律の2本には、前の章と同じ関係名を残します。
図2は第1章と同じ配置を使い、朔→律の関係名だけを変えています。 律に助けられた後、朔が疑いを解いて協力すると決めた設定を、更新の根拠にしています。
「澪→灯:相談相手」は澪が灯に相談する向きのままです。 図は色の違いだけに意味を預けていません。
執筆済みの出来事を記録する図では、気持ちの変化を予感するだけで線を書き換えません。 作品の中に変わる場面がまだないなら、その線は前の章のまま残します。
章ごとの版がそろったら、次は執筆中に図を開いて台詞の呼び方と関係名を比べてみます。
作った図を次の執筆へ使うには?
保存した図の章名を見て今書く場面の版を開き、台詞の呼び方と図の関係名を比べます。 呼び方が違うときは人物の意図を先に確かめ、その後に本文や図を直す必要があるかを決めます。
図は書き上げたら終わりではなく、次の場面を書く前に開いて使う資料です。
保存した図を開き直す
次の場面の前には図の章名を見て、自分が書く時点の版を取り出します。 紙ならその一枚を手元に置き、デジタルなら読むための画像や保存した図を開きます。
デジタルでは、読むための画像と編集を続けられる原本を区別して残します。 画像だけでは図形や線を個別に編集できるとは限らないので、使うツールで再編集できる原本も保存しておきます。
画像を作る機能があるツールでは、図の全体が入った画像を保存します。 名前・4本の矢印・関係名・章名が読めるかを見てから、読み返す版として使います。
線や文字を直すときは、編集原本を開いて修正し、同じ章の画像も作り直します。 画像の保存に対応しないツールなら、保存した図そのものを開いて読めば構いません。
台詞の呼び方を図と比べる
図を開いたら、台詞で相手をどう呼んでいるかと、これから書く章の図の関係名を比べます。 第1章の図では、朔から律へ「疑い」の線が引かれています。
その章で朔が律を親しげなあだ名で呼んでも、それだけで図と台詞が矛盾するとは限りません。 その場面に疑いを隠す描写や、昔からの呼び名である説明、皮肉だと分かる言動があるかを読みます。
そう呼ぶ意図が作品から伝わるなら、呼び方を残せます。 意図がなく、図に残した疑いと台詞の温度が合わないと感じたら、呼び方を直すか、関係が変わった場面を補って図の記載を更新するかを作者が選びます。
よくある質問
結末の構想中に作るときと、作品の読者へ見せるときでは、載せる情報が違います。
結末がまだ決まっていなくても作れる?
作れます。 執筆済みの場面で確定した関係と、後の章で描く予定の関係を区別すれば、相関図は企画の段階から使えます。
第1章まで書いた段階で予定を図にするなら、「第2章・予定:朔→律を協力に変える」のように、章名と予定の印を添えます。 本文を書いた後に、その変化が場面に表れているかを読み、確定した版へ移します。
結末を変えたくなったら予定の図を直し、執筆済みの図は旧版として残しておくと、構想と現在の物語が混ざりにくくなります。
作品の読者へ同じ図を見せていい?
公開した章までの情報だけで別の図を作れば、未公開の展開を読者へ知らせずに済みます。 執筆用の図には、まだ公開していない章の関係や、結末につながる気持ちが入っていることがあります。
公開用の図は、紙なら別紙に写し、デジタルなら別の版を作ります。 そこから、まだ公開していない章の線や関係名を外します。
画像を投稿する先の規約や、作品の公開先で図を載せられるかどうかは、それぞれの条件を読んでから決めます。
まとめ
相関図づくりは、今書いている一場面に必要な人物を選び、片側だけの気持ちを片側だけの矢印で残すところから始められます。 入力表の一行が一本の線になり、章が進んだら旧図を残して、根拠の場面がある線だけを書き換えます。
線が重なったら関係の近い人物を寄せ、長い理由は番号を付けて図の外へ出します。 台詞の呼び方が図の関係名と合わないように見えたら、まずその人物がそう呼ぶ意図を確かめます。
直す必要があると作者が判断した後に、図と本文のどちらを直すかを選べます。
次の場面を書く前に、自分の作品の人物で「章/誰から誰へ/関係名」の3列を書いてみませんか。 最初の一行は、いちばん気になっている片側だけの気持ちからで十分です。
その一本の矢印が、次の台詞で誰に何を言わせるかを決める手がかりになります。
Atelier 創作ガイド
ネタが決まったら、次は「推しの口調」と「夢主設定」を整える。
すぐ書き出したい人向けに、Atelier内のテンプレ記事をまとめています。


