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自分で書いた一段落を読み返すと、「〜た。」「〜た。」「〜だった。」と続く文末ばかりが目について、先へ進めなくなることがあります。
一文だけを「〜る。」に替えてみても、今度はその一文だけが浮いて読めて、また元に戻したくなるかもしれません。
語尾を別の音へ替える前に、一段落の中で重なっている説明と、続いている動作を読みます。そのうえで、意味を変えずに「削る」「つなぐ」「残す」の案を一つずつ試していきます。
私は、文末の音を散らすことより、作者が書いた出来事を変えずに直せるかを先に大事にしたいです。
本文の例は架空の教材です。原文を残し、削る・つなぐ・短文を残す案を段階的に比べます。
同じ語尾が続いたら、どこを見直す?
文末の音だけでなく、その段落で何が起きたかと、同じ説明を繰り返していないかを見直します。
同じ情報の言い直しなのか、一つずつ区切った動作なのかで、試す直し方が変わります。作者が間を置くために短く切った文なら、そのまま残せます。
どれに当たるかを読まないまま文末だけを替えると、音は変わっても、気になっていた理由はそのまま残ることがあります。
まず作品の原文はそのまま別の場所へ残し、気になった一段落だけを取り出します。続いている文末に印をつけても、印のついた文をすべて直す前提にはしません。
次の表は、文末の音ではなく、文の中身から試す案を選ぶための目安です。左の列で段落のどこを読むかを決め、右の列の条件を守れる案だけを残します。
| 読むところ | 試すこと | 変えない条件 |
|---|---|---|
| 重なる説明 | 同じ情報を言い直している一文を削る | 削った情報が別の文に残っている |
| 続く動作 | 順に起きる動作を一文につなぐ | 動作の順番が入れ替わらない |
| 残したい短文 | 作者が止めたい一文は切ったまま置く | 作者が置きたい間が残る |
一つの段落で、三つの方法を全部使う必要はありません。重なる説明がなければ削る案は飛ばし、続く動作がなければつなぐ案も試さずに済みます。
次の章では、5文の架空の一段落を使って、この三つを順番に一つずつ試します。
夜野私は、直したい段落の出来事を一行でメモしてから案を比べたいです。足音を聞く前後が入れ替わった案なら、語尾が整っていても原文へ戻せます。


語尾を変える前に、文をどう直す?
同じ説明を削れるか、続く動作をつなげられるかを試し、場面で止めたい短い文はそのまま残します。
ここからは、編集部が作った架空の一段落を、手で少しずつ直していきます。
作者の設定は、一人称の「私」が借りた本を机に置いて手を離し、そのあと廊下の足音を聞く場面です。誰から借りた本か、誰の足音かは決めていません。正確な日時や「私」の気持ちも未設定です。
作者は、台詞の「明日、返す」を変えずに残し、最後の足音を独立した一文で置きたいと決めています。
原文は次の5文です。
「明日、返す」私はそう言った。借りた本を机に置いた。それは借りた本だった。私は手を離した。廊下で足音がした。5文すべての文末が「た」で、3文目だけが「だった」で終わっています。
3文目の「それは借りた本だった。」は、直前の文にある「借りた本」を、もう一度説明し直している文です。
重なっている説明を削る
最初に、3文目を外した案を作り、原文と比べます。
「明日、返す」私はそう言った。借りた本を机に置いた。私は手を離した。廊下で足音がした。「借りた本を机に置いた。」が前に残っているので、本が借り物であることは、3文目を外したあとも読み取れます。
文は4つになり、「だった」で終わる文はなくなりました。ただ、この案で消したのは「だった」の音ではなく、同じ説明の二度目です。
別の作品で「だった」の一文が、ほかの文にない情報を運んでいるなら、その文は削らずに残す理由があります。
続く動作を一文につなぐ
次に、第1段階の4文のうち、2文目と3文目をつなぎます。
「明日、返す」私はそう言った。借りた本を机に置いて、手を離した。廊下で足音がした。「机に置いた」と「手を離した」は、本を置いてから手を離す、順に起きる二つの動作です。「置いて、」でつなぐと、その順番を崩さずに一文へまとめられます。
つないだときに外れたのは、「私は手を離した。」の「私は」です。前の文から同じ「私」の動作が続いているので、誰が手を離したかは変わりません。
このとき、「そっと」「ためらいながら」のような動作の様子や気持ちは足していません。「置きながら手を離した」のように二つを同時の動きにすると、原文の順番からずれてしまいます。
つなぐ言葉を増やして文を長くすれば整うわけではないので、動作の順がそのまま読み取れるかを基準に選びます。
残したい間は短い文で残す
最後の「廊下で足音がした。」も、前の文へつなげて一文にすることはできます。
この教材では、作者が足音を独立した一文で置きたいと決めているので、ここは切ったまま残しました。
最終の3文も、文末はすべて「た」で終わっています。この教材は、同じ語尾の連続をゼロにするためのものではありません。
それでも原文と並べると、同じ説明の重なりがなくなり、本を置いてから手を離す流れが一文で読めるようになりました。
台詞の「明日、返す」は一字も変えていません。本を置いて手を離し、そのあと足音を聞く順番も原文のままです。
作品によっては、足音まで一文につないだほうが場面の流れに合う段落もあるはずです。どちらの形を採るかは、そこで一度止めて読ませたいかどうかで作者が決めます。



短く切る意図を先にメモしておくと、あとで「た」が続いているのが気になっても、短いまま残す理由へ戻れます。
「た」を「る」に替えてもよい?
一文だけを「る」に替えた案を作り、前後の文と続けて読んでから、段落の語り方に合うかを作者が選びます。
過去形の文の中に現在形を混ぜれば単調さが必ず消える、とまでは言えません。
たとえば、さきほどの最終案の最後の一文「廊下で足音がした。」を、比べるために「廊下で足音がする。」へ替えた案を作ったとします。
このとき、替えた一文だけを読んで音の変化で決めずに、前の「借りた本を机に置いて、手を離した。」から続けて読みます。
替えた案でも、原文にない人物や足音の原因、「私」の気持ちは何も足していません。どちらの言い方がその作品の語り手の調子に合うかを、作者が読み比べて選びます。
どちらが正しいとは決まっていないので、元の「した」へいつでも戻せるように、二つの案を並べたまま比べます。
高山環さんはnoteで、文を長くつなぐ方法や現在形を使う方法、あえて語尾を重ねる方法などを紹介しています。その中で、ご自身が実践しているのは現在形を使う方法だと述べています。
参考:高山環「日本語の語尾が同じになっちゃう問題」(公開2024年2月26日、2026年10月16日確認)
monokaki(by エブリスタ)の逢坂千紘さんは、文末の問題を作品ごとの文体や段落内の言葉の動きと関連づけて論じています。相談者の作品を読み、それぞれの作風に沿った助言をしている記事です。
参考:逢坂千紘「放置したまま書いてない? 文末の違和感と今日でサヨナラ」(公開2021年2月25日、2026年10月16日確認)
どちらも書き手本人の見解や、相談された作品に向けた助言です。この記事では、それを全作品に当てはめる決まりとしては使いません。
文末に「のだった」「のである」を足して音を散らす方法も、この記事の決まった手順にはしていません。
足した案を作ったときは、作者が読みたい語り方になっているか、原文の出来事をよけいに説明していないかを、原文と並べて比べます。



「する」のほうが好きだと思ったら、どの音や区切りが好きか、一言メモしておけます。あとで読み返すときに、その言い方を選んだ理由へ戻れます。
自作の一段落をどう見直す?
残す出来事と台詞を先にメモしてから、一か所ずつ直した案を原文と読み比べます。
残す出来事と言葉をメモする
作品の原文は消さずに、別のファイルやノートへそのまま残しておきます。
そのうえで、直し始める前に次の4つを書き出します。
- 出来事の順番(例:本を置く→手を離す→足音を聞く)
- 語り手(例:一人称の「私」)
- 一字も変えない台詞(例:「明日、返す」)
- 短いまま残したい文(例:「廊下で足音がした。」)
作品の中でまだ決めていない時刻や気持ちは、メモの段階でも補わずに空けておきます。
この記事の5文は練習のために短くした長さです。作品の段落を5文ずつに区切って直す必要はなく、気になった一段落をそのままの長さで扱えます。
直した案を原文と読み比べる
直した案ができたら、メモと原文を横に置き、次の三つを一つずつ読み比べます。
- 削った情報が、別の文に残っているか
- 動作の順番が、原文から入れ替わっていないか
- 台詞の一字一字が、原文と同じか
音の流れが好みに合っていても、この三つのどれかが変わった案は、いったん保留にしておきます。
私は、文末がきれいにそろっても、残したい台詞の一字が変わる案は採りたくありません。
ここまでの作業は、作品をどこかへ送らなくても、原文とメモがあれば手元だけで進められます。
いま手元にある作品の段落で、直した語句に印をつけ、原文と並べてみましょう。印が一か所だけでも、消した情報や動作の順番がどの文へ移ったかを、原文と見比べながらたどれます。



削った言葉とつないだ箇所に違う印をつけておくと、どの変更を戻すか選べます。削る案だけを残し、つなぐ案は見送る直し方でもかまいません。
語尾の繰り返しでよくある質問
回数だけで直すかを決めず、台詞か地の文か、下書きの途中か推敲の段階かで扱いを分けます。
同じ語尾は何回まで使ってよい?
何回まで続けてよいかの決まった回数は、この記事では置いていません。
続いた文が同じ説明を繰り返していないか、作者がその間で一度止めて読ませたいかで、直すかどうかを選びます。
台詞の語尾の繰り返しも直す?
台詞の語尾は、その人物の口調として作者が決めた言葉なので、地の文の見直しとは分けて扱います。この記事の例でも「明日、返す」は変えていません。
地の文の語尾を散らすために、台詞を別の人物のような言い方へ替えるのは避けたいところです。人物の話し方を見直したいときは、地の文の作業とは別に、その人物の台詞だけを続けて読みます。
気になって書き進められないときは?
下書きの途中なら、気になった段落に印やメモだけを残して、先の場面へ書き進める方法があります。
場面を書き終えてから印の段落へ戻れば、そこから推敲を始められます。戻ったときも原文は消さずに残し、一か所ずつ直した案と比べます。



気になった段落には「あとで語尾を見る」と短くメモしておけます。今は先の場面を書く、と作業を区切る方法を残しておきましょう。
まとめ
作品の一段落で、重なる説明・続く動作・残したい短文を読み、出来事と台詞を守りながら一か所から直します。
「た」「だった」が続くのが気になったら、語尾を別の音へ替える前に、段落の中身を読みます。同じ説明の二度目は削り、順に起きる動作はつなぎ、作者が止めたい一文は短いまま残します。
例の最終案にも「た」が続いていたように、文末の回数が減り切らなくても、出来事と台詞を守った直し方は試せます。
「る」へ替える案や「のだった」を足す案も、決まった手順ではありません。前後の文から続けて読み、作品の語り方に合うかで作者が選ぶ案の一つです。
まずは作品の原文を残したまま、気になった一段落の中に、同じ説明を二度している文が一つあるかだけを探してみましょう。
見つかったら、その一文を外した案を原文の横に置きます。例の「借りた本」のように、外した情報が前の文に残っているかを読み比べると、その一文を削るかどうかを作者が決められます。
全部の文末を違う音にしなくても、残したい一文を守ったまま、段落は一か所ずつ直していけます。



最初の一か所で試すなら、私は「ここは残したい」と思う文を先に決めたいです。削る案と並べたときに、原文を残す理由も言葉にできます。
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Atelier 創作ガイド
ネタが決まったら、次は「推しの口調」と「夢主設定」を整える。
すぐ書き出したい人向けに、Atelier内のテンプレ記事をまとめています。











